🍍第3回🍍 松下 かなさん

Kana

人は変われる、そのきっかけを作りたいという思いは今も変わらない

長年売上トップの美容師だった松下 かなさんは、先月、家族療法カウンセラー兼チャイルドカウンセラーとして活動を始めたばかりだ。
「昔と今では、きっかけを作る”手段”が変わっただけ」と凛とした口調で話す。

子どもたちには暗い未来よりも明るい未来を見せていきたいと語るが、そんなかなさん自身、ほんの数ヶ月前までは未来の展望を持てずにいた。

選んだ役割にコミットし続けてきた

現在は7歳と4歳の娘2人と夫とともに地元に住んでいるが、これまで東京や大阪など、馴染みのない土地でワンオペ育児を続けてきたこともあり、「”産後うつ”から脱した感覚は最近までなかった」と言う。

第1子の妊娠を機に辞めるまで10年以上続けた美容師の仕事は、中学1年生の頃から志していた。
当時から髪型にはこだわっていたが、担当の美容師に細かい希望を言うのは気が引けた。だからこそ、相手の本当の希望や魅力に気づいて形にできるようになりたいと思った。

中学卒業後すぐにその道へ進む選択肢もあったが、エースとして活躍したバスケットボール部の引退試合を転校により断念したこともあり、高校で部活動を続けたいという思いが強かった。今後の人生のことも考え、進学校への入学を決める。
その後、合格倍率10倍という難関試験を突破して入った美容専門学校で、厳しい訓練の日々を過ごした。

常に最上を目指す姿勢をそのままに進む。
「就職先は、”厳しいところ”を基準に選びましたね」その言葉どおり、オーナーが厳しい指導をすると聞いた大手の美容室で仕事を始めるが、思い描いていた”厳しさ”とは違うことに徐々に気づく。

理不尽なことが次々起きる中でも、かなさんはあらゆる指標においてトップの結果を出した。後輩達に背中を見せなければ、と毎日早朝から深夜まで16時間以上働いていた。

無理がたたって過食や手の震えが止まらなくなった時も、自身の理想とするスタイルを実現するために東京へ行きたいと思った時も、結局、お店や同僚の事情を優先して断念する。

努力が実って大きな仕事を任され、各種媒体にも掲載され、周囲から高く評価されていた当時について、「仕事には自信があったけど、自分には自信がなかった」とかなさんは振り返る。
役割に合わせて動いている自分、演じている自分。進退を自分軸ではなく他人軸で決めてしまったことで本当の自分がわからなくなり、毎週「私ってどんな人?」と親友に確認する日々だったと言う。

妻として母として“ちゃんと”モードへ

数年経ち、転機が急に訪れる。現在の夫に出逢い、1ヶ月後にはプロポーズを受けていた。そして半年後に入籍したが、そのタイミングで夫の東京転勤が決まり、すぐに別居婚生活へと突入。

職場には、入籍する前から勤務時間の変更を交渉していたが一切聞き入れられず、仕方なく退職の意思を示すと今度は即座に辞めるように言われてしまう。常連のお客様へのご挨拶も許されず、自身のブログへの投稿も削除させられた。

当初、仕事をしっかり引き継いでから行こうと考えていたかなさんは、夫と話し合い、東京への移住に1年の猶予を取りつけていた。移住までの間、もともと理想としていたスタイルを実現できる知人の美容院で腕を磨こうと地元で再就職するが、半年経たないうちに夫から約束を反故にされる。
「妻を”ちゃんと”やってほしいということで、そろそろ東京に来るように言われました」
妻として夫の身の回りの世話をしてサポートすることに憧れていた部分もあったかなさんは、予定を前倒しして夫の待つ東京へ引っ越すことに決めた。

東京に移ってからは友人の美容室でパート勤務をしていたが、第1子妊娠を機に仕事を離れた。
この頃から、夫は海外出張続きで不在が増えていき、忙しさから余裕を失い不機嫌なことが多くなっていった。一方で、かなさんはワンオペ子育てによる産後うつ状態となり、夫の影響も加わって心身ともに不安定なまま、2回の流産、第2子の出産、大阪・福岡への引越しを経験する。

自分と同じように、心がひとりぼっちになっているママを支えたい

つらい中でも、子育てに関する様々な情報を学んでいたら、いつの間にか周囲のママ友から相談を受けるようになっていた。
しかしかなさんも、自身の生活でいっぱいいっぱいに。2ヶ月ほど相談に応じられない期間があり、その間に近しい方の状況が悪化していたことに心を痛めた。
「これを仕事という形にできれば、もっと時間を取って相談を受けられるのではないかと思いました」

ここから、家族療法カウンセラー兼チャイルドカウンセラーとしての活動に向けて動き始めたものの、根本的な問題があった。
かなさん自身が、夫の機嫌に振り回されて一喜一憂しているという事実。
初めての自己投資として参加したワークショップで、「それに気づいて、夫に対して”何もしてあげなくていい”のだと言われて、考えが変わった」と語る。

今は自分のやりたいことに集中できるようになったことで、夫との関係も健全な方向へ変わりつつあるとのこと。
そして先月から実際の活動を始めた傍ら、さらに保育士の資格取得に向けて勉強もしている。

「美容師だった時は、髪型だけじゃなく心もケアしたいと思って接していました。今もそこは変わりません」

今回のstand.fm コラボトーク収録はこちらからお聴きいただけます。
今後の連載情報は【LINE公式】Amigo a.k.a. あんちゃん よりアップデートいたします。

Kana
Amigo a.k.a. あんちゃんの最新情報をチェック!